実の父親にレイプされながら育ったロルの話も、子供への性的虐待の90%は「見知らぬおじさん」が加害者ではなく、子供の親や親戚、親の友人といった人々によって行われているのだというリアリティーや、そうした虐待がアンダークラスの家庭で起こりがちだという現実を浮き出させている。
『This is England 86』で父親を殺してしまうロルは、当該ドラマ88年版では、父親の亡霊につきまとわれて自殺を図る。その悲劇が88年版のストーリーの軸になっているが、冷静な目でロルの人生を見てみれば、「今でも、心はスキンヘッドだよ」と啖呵をきっていたスキンヘッド・ギャングの姐御が、いつの間にか「ブラックベイビー」を産んで、疲れきったシングルマザーとなり生活保護で生きている。
この流れは、現代の底辺生活者サポート施設にも繋がっている。他にも、映画版ではバリバリのスカ少年だったのに、いつしかくたびれたブロスのようになり、「いい加減で働け」と父親にボコボコに殴られている青年など、このシリーズの登場人物たちが、二十数年後には底辺生活者サポート施設のゴム長パンク親父になり、片目が潰れたヨハネになっている姿は容易に想像できる。
それ故、ノスタルジックな目線でフォークランド紛争やレイシズムを取り上げた映画版が崇高な作品で、元スキンヘッド・ギャングたちの私的生活を描いた続編ドラマはソープオペラ。という見方はあまりに早計だろう。
見方を変えれば、ブロークン・ブリテンやロンドン暴動にも繋がっているアンダークラスの成り立ちを描いた続編ドラマの方が、よほどシリアスに現在進行形の社会問題を追っている。
英国には、いったいどうしてそんな階級が生まれ、定着することになったのかしら。と思う方には、小難しい論文や研究結果のリポートを読むより、『This is England』の続編ドラマ版を見ることをお勧めしたい。
ドラマの中でだらだらしている若者たちが、そのまま20年だらだらし続けたらどうなるか。ということだ。
(brccolsyから)